2020.06.02

株式会社おいしい健康『ライフログ解析による、外出自粛後の生活変化』を報告
〜起床は1時間遅れ、男性は間食が2倍に増加。ドライアイ症状なども〜

食と健康のヘルスケアスタートアップ・株式会社おいしい健康はこのたび、スマートフォンアプリ「食べリズム(以下、本アプリ)」のライフログデータをもとにした、「新型コロナウイルス感染症対策による外出自粛後の生活変化」について分析報告を取りまとめましたので、お知らせいたします。

食べリズムとは

食べリズムとは、株式会社おいしい健康と慶應義塾大学医学部眼科学教室(坪田一男教授)による共同研究「アプリを利用した食生活習慣と心身健康度の調査(Time Restricted Feeding by Mobile Apps Study)」を目的として開発したスマートフォンアプリ(iOS)です。

具体的には、食事タイミングなど生活リズムの記録・解析により、概日リズム(circadian rhythm)を通じた様々な健康効果を探索・検証するものです。

今回の報告について

このたびの報告は、本アプリにおけるサービス利用データをもとに、「新型コロナウイルス感染症対策による外出自粛が、アプリ利用者の生活にどのような変化をもたらしたか」を観察するため、株式会社おいしい健康にて作成いたしました(分析担当:花井、成澤、野尻)。

本報告は、新型コロナウイルス感染症に関する調査研究を当初目的としたものではなく、アプリサービスの提供によって得られたデータを事後的に解析したものであり、あくまでも参考情報であることにご注意ください。また、本報告は、学術誌の査読を受けておりません。現在の事態の重大性を鑑み、今後の政策や研究、あるいは生活者の健康管理の一助になることを目的として、開示させて頂きます(転載許可については末尾をご覧ください)。

本報告からの示唆

「外出自粛による生活への影響は、必ずしもネガティブなものではなく、前向きな内容も見られました。このようにデータに基づく生活実態の分析を踏まえ、新しい生活様式を単に窮屈なものとせず、より安全で心地よい暮らしとなるよう、社会全体で取り組んでいくことが大切です。また、生活習慣が大きく変わりましたから、生活習慣病対策などの健康管理や療養支援においても、これまでとは異なる発想での見直しが必要となっていくものと考えます。」

本報告の概要

1. 緊急事態宣言以降、起床時間が遅くなる傾向が見られた

  • 2020年1月から4月までの平均起床時間は、昨年比で平均31分遅くなり、特に4月以降では1時間ほど遅くなっている

2. 就寝時間はほぼ変わらず

  • 平均就寝時間においては、昨年と今年で変化なし(23時49分)

3. 平均睡眠時間は26分の増加

  • 平均睡眠時間は2019年の7時間から、2020年では7時間26分へ増加

4. 夕食をとる時間が25分、早まる

  • 朝食と昼食のタイミングは、昨年比でほぼ変化なし。ただし4月以降では、朝食のタイミングが30分ほど遅くなり始めている
  • 夕食タイミングは、昨年に比べ25分ほど早くなっている

5. 男性における間食が平均2倍に増加

  • 男性における1日あたりの間食回数が平均で2倍に増加
  • 女性では昨年比で大きな変化は見られず
  • 夕食時間が早まった影響か、男性で22時前後の間食が増加した模様
  • 1日あたりの飲酒者率は、2020年3月末から4月上旬に一時的に減少

6. 外出自粛以降の平均歩数/日は、昨年に比べて1290歩(22.9%)減少

  • 2019年と2020年の4月4週における定点比較では、20代および50代で歩数が50%以上減少。全世代でも42.7%減少(-2697歩/日)
  • 2020年1月2週(年初)との比較では、4月以降、30代および40代で歩数が持ち直しつつある

7. 主観的疲労感はほぼ変わらず。他方で、幸福感が高まっている層も

  • 主観的な疲労感は、2019年と2020年でほぼ変わらず
  • 一方、主観的幸福感は昨年より高まっている層が存在。在宅勤務の拡大により、就労環境が改善したことなどが影響している可能性がある。ただし、4月7日の緊急事態宣言前後においては、幸福感は大幅に下落

8. 一部の項目では、4月上中旬から2019年と同等水準に回復の兆し
(現在のライフスタイルに「慣れ・適応した」可能性?)

  • 女性の間食、30-40代の歩数、ドライアイおよび眼精疲労については、4月上中旬ごろから2019年同時期と近しい水準に戻っている
  • 外出自粛は継続していることから、元のライフスタイルへ戻ったのではなく、現在のライフスタイルへの「慣れや(工夫による)適応」が進んでいる層の存在を示唆している

起床時間

2020年では、2019年の同時期に比べ、起床時間が遅くなった傾向が見られます。平均起床時間では、2019年が6時53分、2020年が7時24分となり、31分遅くなりました

とりわけ一斉休校(3月2日)以降は、グラフにある通り起床時間が顕著に遅くなり始め、緊急事態宣言(4月7日、7都府県)以降では、1時間以上遅くなっています。4月以降の平均起床時間は、2019年がおよそ6時50分前後であったのに対して、2020年には7時50分〜8時過ぎとなっています(図2)。

図2 起床時間における2019年と2020年の同時期比較 起床時間が遅くなった傾向が見られます

就寝時間

2020年では、2019年の同時期に比べ、就寝時間の変化は非常に小さいように見られます。平均就寝時間は2019年、2020年ともに、23時49分でした(図3)。

在宅勤務などの外出自粛後において、起床時間は遅くなるものの、就寝時間はそれまでと変わらず、という方が存在するように見受けられます。

図3 就寝時間における2019年と2020年の同時期比較 就寝時間の変化は非常に小さいように見られます

食事のタイミング

食べリズムの利用者は、朝食・昼食・夕食および間食・飲料(エネルギーのあるもの)を写真によってタイムスタンプ的に記録します。図5は、2018年7月30日から2020年4月26日における、3632人の食事タイミングの記録となります。

図5 食事タイミングの記録 3632人の食事タイミングの記録

朝食のタイミング

2020年では、2019年の同時期に比べ、朝食時間が早くなった傾向が見られます。平均朝食時間は、2019年が8時15分、2020年が8時9分となりました(図6)。

しかしながら、図4にあるように、4月以降では如実に朝食時間が遅くなっている様子が伺えます。4月以降では、2019年に比べておよそ30分ほど、朝食時間が遅くなっています。起床時間の変化と比較すると、起床時間が遅くなる一方で、朝食のタイミングはそこまで大きくは変化していない可能性があります。

図6 朝食タイミングにおける2019年と2020年の同時期比較 朝食時間が早くなった傾向が見られます

夕食のタイミング

2020年では、2019年の同時期に比べ、夕食時間が早くなった傾向が見られます。平均夕食時間では、2019年が19時13分、2020年が18時48分となり、25分早くなりました(図8)。

管理栄養士監修のレシピを提供する当社サービス「おいしい健康」の利用者が、当該期間で2倍に増加したことから、夕食のタイミングが早まるだけでなく、家庭での調理機会も増加した可能性が高いと考えられます。

図8 夕食タイミングにおける2019年と2020年の同時期比較 夕食時間が早くなった傾向が見られます

間食の回数

2020年では、2019年の同時期に比べ、1日あたりの間食の回数が平均14%増加しました(図9)。性別での内訳を見ると、男性では196%にまで増加した一方、女性では112%と若干の増加となりました(図10, 11: 図は省略)。なお、ここでは「もともと間食をしない方」の存在を除外していないことにご留意ください(その結果、男性のサンプル数は小さくなっております)。

図9 2019年と2020年における平均間食回数(全体) 1日あたりの間食の回数が平均14%増加しました

間食のタイミング

夕食時間が早まる一方で、男性における間食回数が増えたとなると、空腹による「就寝前の間食」増加が、健康面で気になるところではあります。

男性の間食タイミングを示す図12では、21時-23時ごろに間食が増えている様子が伺えます。

他方、女性の間食タイミングは以前からあまり変化なく、15時-16時ごろに集中しています。

図12 間食時間のプロットデータ(男性) 1日あたりの間食の回数が平均14%増加しました

1日の歩数

2020年では、2019年の同時期に比べ、1日の平均歩数が減少しています(図14)。本来であれば昨年と今年の気象条件の違い等を加味しなければなりませんが、単純に歩数データのみを観察すると、2019年の同期間に比べて全体で1290歩/日、歩数が減少しています。

年代別により詳しく見てみると、20代および50代以上において、2020年4月以降の歩数が低迷しており、他方で30代および40代においては歩数が回復傾向にあります。

図14 2019年と2020年における平均歩数の同時期比較(全世代) 1日の平均歩数が減少しています

主観的幸福感

食べリズムではその日の終わりに、1日の主観的幸福度をVASを用いて調査しております。

図21は、2019年および2020年の同時期における幸福度の変化を比較しており、2020年2月ごろでは幸福感が昨年より増していた層が存在する可能性が伺えます(在宅勤務の拡大といった影響が考えられます)。また、2020年4月7日の緊急事態宣言前後においては、幸福感が大幅に下落しています。

図21 2019年と2020年における幸福度の同時期比較 1日の平均歩数が減少しています

主観的幸福感

食べリズムではその日の終わりに、1日のドライアイ症状ならびに眼精疲労をVASを用いて調査しております。

図22は、2019年および2020年の同時期におけるドライアイ症状の変化を比較したものです。在宅勤務が増加したと思われる2020年2月より、ドライアイ症状を自覚する方が大幅に増加しています。

これは、「在宅勤務によりVDT作業が増加した」「オフィスと比べて室内の勤務環境の照明やモニターサイズが不足している」「外出自粛により日光照射時間が短縮化している」など、様々な環境変化による影響を示唆しているものと考えます。

なお、3月下旬から4月以降においては、ドライアイ症状・眼精疲労ともに急速に低下(改善)しております。判別するには不十分な期間のデータではありますが、現在のライフスタイルに「慣れた・(工夫などして)適応した」方が増えているのかもしれません。

図22 2019年と2020年におけるドライアイ症状の同時期比較 ドライアイ症状を自覚する方が大幅に増加しています

以上となります。
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株式会社おいしい健康について

株式会社おいしい健康は、「誰もがいつまでも、おいしく食べられるように」という理念のもと、生活者・家庭目線のヘルスケア事業を展開しております。テクノロジーとビッグデータを活用し、生活者個々の健康を食事面から支えることは、病気予防や重症化防止に寄与するのみならず、その先にある「心からの笑顔」を増やすことにつながります。元気であってほしい、食べたい・食べさせてあげたいという家族の想いを叶え、健康維持や予防、病気、妊娠・育児や介護のときであっても、毎日を笑顔で過ごせる社会の実現を目指します。

食と健康のパーソナライズ支援サービス「おいしい健康」

スマートフォンアプリ「おいしい健康」は、ダイエットや病気予防、妊婦・高齢者、患者さんなどの食事管理の支援を目的に、管理栄養士監修のレシピ・献立のパーソナライズサービスとして、幅広くご愛用いただいております。

健康状態や疾患に適した食事を毎日続けることはむずかしい側面も多く、「おいしくない」「続けられない」などの不安や悩みは尽きません。どんなときも安心して食事を楽しんでいただけるよう、たくさんのおいしいレシピと情報技術を通じて、エビデンスに基づいた食事支援を行います。

なお、おいしい健康の利用者数は、新型コロナウイルス流行以降、2倍以上へと増加いたしました。

サービスURL
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アプリ紹介ページ
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おいしい健康が対応する食事のテーマ
一般の方の健康的な食事、ダイエット、健康診断で気になる数値がある方(血糖値、血圧など)、糖尿病(2型)、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、貧血、ニキビ・肌荒れ、妊活、低栄養予防、がん治療中の方(食欲不振、消化不良、味覚変化など)、妊婦健診、妊娠中(初期、中期、後期)、妊娠高血圧(中期、後期)、妊娠糖尿病(初期、中期、後期)、透析治療中の方

外出自粛生活支援サイト「おうちの過ごしかた」をリリース

株式会社おいしい健康では、外出自粛における食と暮らしの困りごとを解決すべく、特設サイト「おうちの過ごしかた)」を4月27日にリリースいたしました。

新型コロナウイルス感染症対策を目的とした外出自粛要請により、多くの方々の生活環境・リズムに影響が及んでおります。とりわけ有病者に至っては、感染・重症化リスクを懸念しつつ、激変する生活環境下での自己管理が求められることとなります。本サイトでは、疾患やシチュエーションごとに、外出自粛時における専門医からの健康管理アドバイスや管理栄養士おすすめレシピをご紹介。外出自粛における「食事・健康管理」と「楽しみの見つけ方」を発信しております。

会社概要

代表取締役CEO
野尻哲也

設立日
2016年7月1日

事業内容
ITを活用したヘルスケア事業、生活メディア事業

コーポレートサイト
https://corp.oishi-kenko.com/

本件に関するお問い合わせ先

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